© 2023 JAPAN PRESTRESSED CONCRETE CONTRACTORS ASSOCIATION

TECHNICAL INFORMATION

技術情報

概要

概要

我が国におけるPC構造物の発展は,昭和26年(1951年)に建設された長生橋に始まり,その歴史は約70年です。その間にPC技術はめざましい進歩をとげ,要求される性能とともに技術水準も大きく変化しました。そのため,PC構造物の維持保全に関しては,施工年度により保有している性能が異なっていること, あるいは施工場所の環境により外的作用力が変化することなどを熟知しておく必要があります。

■長生橋

昭和27年に建設された我が国で最初のプレテンPC橋です。 本橋は建設後50年目の平成13年に河川改修に伴って撤去され一部は七尾市郊外にある希望の丘公園に移設されています。(写真は移設後)

■第一大戸川橋梁

昭和29年に建設された我が国初の本格的なポステンPC橋です。本橋は,現在も供用されており, 平成20年に文部科学省文化審議会により登録有形文化財として登録されています。

維持保全の流れ

PC構造物の維持保全においては,目標に応じた維持保全計画を立案し,点検・調査の結果を踏まえた適切な対策を講じることが望ましい。 PC構造物の維持保全の流れについて 下図に示します。

■予防保全対策

予防保全を前提とした維持保全を行う場合は,劣化の前兆を捉え,劣化が生じる前に対策を講じる必要があります。 それには予想される劣化の推定が重要であり, 計画の段階において劣化の前兆を捉えるための点検・調査方法あるいは評価・判定方法について十分に検討しなくてはいけません。

■事後保全対策

事後保全を前提とした維持保全を行う場合は, 関連する技術規準類を把握したうえで,点検によって確認された劣化状態の評価・判定を行い,必要に応じて補修や補強を実施することです。
このため点検の実施方法や点検結果の取り扱いが重要となります。

PC構造物の維持保全は『予防保全』が基本

PC構造物は,プレストレス力により構造物本体に圧縮応力を与えることで,引張強度が小さいというコンクリートの欠点を補った構造物です。

図2 に示すように,一般に載荷中の梁の荷重たわみ曲線は,RC梁がなだらかな曲線を示すのに対して, PC梁では途中で変化点を持った曲線となります。 これは,RC梁はひび割れを許容するため荷重の載荷とともにひび割れが増加・拡大するのに対し, PC梁は荷重の載荷による引張応力がプレストレスによる圧縮応力を超えてひび割れ強度に達した時点でひび割れが発生するからです。 したがって、PC構造物において,ひび割れの発生を耐荷性能の指標にすることは構造上危険となる可能性があります。 PC構造物の維持保全は予防保全を基本とし, 予防的な補修・補強によって耐荷性能をできるだけ低下させないように維持することが重要となります。

■RCとPCの違い

PC構造物は,RC構造物に比べて,ひび割れが発生するまでに劣化が相当に進行し, ひび割れ発生後の耐荷力や変形性能の余裕が小さいと考えられることに注意しなければいけません(図5参照)。 すなわち,RC構造物の診断で重用されている「ひび割れ」を指標にしてPC構造物の劣化評価を行うと, 予防保全が行えないばかりか,最悪のケースではすでに耐荷力を喪失した時点となっているおそれもあります。 現状では,点検時に確認できる「変状」として「ひび割れ」に代わる万能なものはないものの, 「水しみ」や「遊離石灰」などが評価の目安になると考えられます。

予防保全のカギは『水』対策

PC橋に見られる変状のうち,漏水や遊離石灰の多くは,橋面の滞水や排水装置の不具合などによって生じており, 目地やひび割れなどに「水」が浸透したことが原因です。 また,コンクリートのはく離や鉄筋露出,錆汁などは,「水」の浸透による劣化がさらに進行した形で表面化したものであります。

近年,凍結防止剤を含む「水」の影響によって橋梁の桁端部が劣化する事例が確認されています. PC橋の場合,桁端部はPC鋼材が定着される重要な部位であり,PC鋼材の劣化が顕在化すると抜本的な対策を施せなくなることが想定されます。

したがって,予防保全のカギは「水」対策につきるといっても過言ではありません。

予防保全の留意点

劣化の原因となる「水」をPC鋼材に作用させないこと。橋面の滞水や排水装置の不具合などに対する対策が優先されます。 なお,桁端部などに漏水が集中している場合には,局部的に鉄筋の腐食やPC鋼材の劣化,支承・下部工の劣化が引き起こされるので注意が必要です。
橋体にあまり損傷を与えないようにすること。断面修復を行う場合, 部材に導入されているプレストレスがコンクリートをはつり取ることによって損失・変化するなど, 力学的性能が低下する場合もあるので耐荷性能の十分な検討が必要です。 また,配置されているPC鋼材を損傷させないことに細心の注意が求められます。

PAGE TOP